成年後見制度利用までに必要な手続と流れについて解説/湘南なぎさ合同事務所

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成年後見制度利用までに必要な手続と流れについて解説

判断能力が不十分な方を法的に保護する制度として「成年後見制度」があります。家庭裁判所に申立てを行うことで同制度の利用を始めることができるのですが、その過程でいくつかの手続・作業を行う必要があります。

また、同制度には①法定後見制度と②任意後見制度の2種類があり、それぞれ開始までの流れが異なります。そこで当記事では、まず両制度に共通する基本的な流れを解説し、その後各制度独自の手続内容を説明していきます。

成年後見制度利用までの基本的な流れ

法定後見制度と任意後見制度、どちらの制度を利用する場合でもまずは専門家に相談することから始めるのが一般的です。そして専門家のサポートを受けつつ必要書類の作成や準備、申立てを進めていくことになります。

各手続を、全体の流れに沿って説明していきます。

専門家への相談

成年後見制度は、判断能力の低下・喪失した方を保護するための制度ですが、介護など日常生活のお世話を目的としているわけではありません。法律行為のサポートなど、法的な支援を行うのが目的です。

そこで同制度の利用について相談をするときも、法令を専門分野とする弁護士や司法書士などの専門家が主な相談先です。
これら成年後見制度に詳しい専門家に現在の状況を伝え、同制度の利用が適した場面なのかどうか、どのように手続を進めるのか、アドバイスをもらいましょう。

なお、法定後見制度と任意後見制度では相談のタイミングが異なります。
法定後見制度は、本人の判断能力に問題が生じてから申立てを行うことになります。事前の相談を持ち掛けることもできますが、具体的な手続を進めるための相談は、本人が認知症等により独立して法律行為を行うのが難しくなってからになるでしょう。
これに対し、任意後見制度は本人が任意後見契約を交わす必要があります。そのため本人に判断能力がある時期での相談となるでしょう。

予算の検討

成年後見制度を利用するには費用がかかります。申立てをするだけなら大きな問題にはなりませんが、その後継続的に費用が発生しますので、予算についても検討する必要があります。

例えば法定後見制度の申立てでは必要に応じて次の費用が発生します。

法定後見制度の利用にかかる費用 金額
申立手数料 800円
代理権、同意権付与の申立手数料 800円
郵便切手代 数千円程度
診断書の作成料 1万円程度
鑑定料
※鑑定を求められた場合に限る
10~20万円

また、戸籍謄本や住民票などを添付するときはそれぞれ数百円の取得費用がかかります。場合によっては不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書、登記されていないことの証明書などの取得費用も発生します。

さらに、専門家が後見人等に就任した場合はその後見人等に対する報酬が毎月発生します。金額は、本人の経済力などを考慮して裁判所が決めます。相場は2~6万円程度です。

任意後見制度を利用するときは任意後見契約の締結から始めるのですが、その際交わす契約書は公正証書とする必要があります。そこで次の費用が事前に必要です。

任意後見制度の利用にかかる費用 金額
公正証書の作成手数料 11,000円
書留郵便料 540円
印紙代 2,600円
登記嘱託料 1,400円
正本謄本の取得 証書の枚数×250円

戸籍謄本や住民票などが必要となり、それぞれに数百円程度かかるのは法定後見制度同様です。

また、専門家に任意後見人に就任してもらった場合の任意後見人や任意後見監督人に対する報酬も毎月発生します。報酬額については、法定後見制度と大きな差はありません。

医師による診断を受ける

法定後見等を開始するにあたっては、本人の判断能力が低下・喪失したことを示す必要がありますので、まず医師による診断を受けて、家庭裁判所所定の診断書を取得しておきましょう。

なお、その診断書から「精神上の障害により判断能力がなくなった又は不十分になったこと」を読み取れることが大事です。同制度は、身体上の障害だけが原因で法律行為ができない方などの保護は想定していないからです。診断書にも「精神上の障害」という記載が必要です。

とはいえ、医師の作成した診断書を提出したとしても、同制度の利用や裁判所のする審判内容を決定付けられるわけではありません。あくまで成年後見の申立てをどの類型(補助・保佐・後見)で行うのかの判断をするためのものであり、裁判所の判断を拘束することはありません。
また、診断書を提出したとしても、裁判所から鑑定を求められることがあります。

必要書類の準備

診断書のほか、申立てに必要な各種書類を集めていきましょう。

法定後見制度における必要書類の例を以下に示します。

  • 後見開始の申立書
    ※または保佐開始の申立書、補助開始の申立書
  • 申立事情説明書
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 本人の財産目録と収支予定表
  • 親族関係図
  • 親族の意見書
  • 登記されていないことの証明書

ほかにも、預貯金口座の残高証明書や不動産登記事項証明書、金銭消費貸借契約など、財産状況に応じて必要になる書類が出てきます。

任意後見制度を利用するために任意後見監督人選任申立てをする場合も本人の戸籍謄本や、財産に関する資料を準備します。
その上で、「任意後見契約公正証書の写し」も必要です。

家庭裁判所への申立て

費用、必要書類の準備ができれば、家庭裁判所に申立てをします。申立て先の家庭裁判所は、保護対象となる本人の住所地を基準に決まります。

なお、法定後見制度では「後見開始の申立て」や「保佐開始の申立て」、「補助開始の申立て」を行うのですが、任意後見制度の場合は「任意後見監督人選任の申立て」を行います。
任意後見制度では監督人が必須であり、監督人が選任されることにより任意後見を始められます。

審判と登記が行われる

申立て後、家庭裁判所が審理を始めます。提出書類の内容をチェックし、不備がないかどうか、そして後見等を開始すべきかどうかを判断します。判断材料を集めるため、申立人、後見人等候補者、本人などと面接を行うこともあります。
審理期間は数ヶ月程度かかると見ておきましょう。

問題がなければ、法定後見制度の場合、後見等開始の審判が下されます。審判書が送付され、その後2週間以内に不服申立てがされなければ審判が確定。家庭裁判所が法務局に後見登記を依頼し、登記が完了すると後見等が始まります。

任意後見制度の開始までもおおむね同じ流れで進みますが、こちらは任意後見監督人が選任されますし、あらかじめ交わした任意後見契約に従って後見を始めることになりますので登記事項にも違いがあります。

法定後見制度で必要になる手続

法定後見制度は、判断能力低下の度合いが低い順に、①補助、②保佐、③後見が開始されます。

補助の手続を行うのは「特定の重要な手続に限り、単独で決めることに心配がある」場合です。
「借金をする」、あるいは「他人の借金について保証人になる」ことについて心配があるのなら、その行為につき同意権付与の審判を申立てます。これにより本人が補助人の同意を得ずに借金をしたり保証人になったりしても、その契約を取り消すことができるようになります。

保佐の場合、保佐人に付与される同意権の範囲が広がります。別途申立てで指定する行為のほか、民法第13条第1項に規定されている重要な法律行為が同意権の対象になります。借金をすること、保証人になることに対して同意権を付すため、別途手続を行う必要はありません。ただし同意権の範囲をさらに広げたいときや、保佐人に代理権を付与したいのであれば申立て手続が必要です。

後見の場合、原則としてすべての法律行為につき後見人が代理権を持ちます。そのため手続としては、別途特定の行為を指定して申立てを行うなどの必要はありません。ただし、後見人となる方の仕事量は増えますし、幅広い法律行為について適切に代理できるだけの知識や経験を持っていることが望ましいです。そのため法律の専門家に依頼するなどの対応を取ると良いでしょう。

任意後見制度で必要になる手続

任意後見制度の場合は、本人が任意後見人受任者と任意後見契約を締結する過程が必要です。

この場合もやはり、財産の管理や契約締結などの行為を適切に実行できる人物を選定することが大事です。

また、契約内容の検討が特に重要です。
①財産の管理(不動産や預貯金の管理、年金の受け取り、公共料金等の支払い など)と、②介護等生活面の手配(介護サービスの申込み、医療契約の締結、入院手続、要介護認定の申請手続 など)が任意後見人の主な仕事内容ですが、その詳細を契約で定めていくことになります。
※代理権を行使することが任意後見人の仕事であり、被後見人の食事のお世話やおむつ替え、掃除といった事実行為は成年後見制度の対象外。

専門家とも話し合い、代理権を付与する行為の内容など、詳細を決めていきましょう。

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