相続が始まると、遺産分割や相続税の計算をするためにも、財産の調査を進めなくてはなりません。亡くなった方がどんな財産を持っていたのか、不動産や株式、預貯金のことなどを一つひとつ調べていくのです。
ここで、調べるべき財産の内容、そして調査の方法や費用の負担についても紹介していきます。
調査すべき財産の種類
被相続人の財産はすべて調査します。例えば次に挙げる財産です
- 土地
- 建物
- 貴金属
- 美術品
- 自動車
- 骨董品
- 家財道具
- 株式
- 国債や社債
- 現金
- 預貯金
- 借金や未払金 など
注意点は大きく2つです。
1つは「借金などの負債の存在も疑って慎重に調査すること」で、この存在が相続放棄の検討にも関わってきます。予想外に大きな借金が残っていると相続することがリスクになってしまいます。
もう1つは「生前贈与された財産も調査すること」です。過去に贈与された財産も遺産分割時に考慮するケースがあるためです。特定の相続人だけ特別の利益を受けていたとき、その方の法定相続分から過去の贈与分を控除することがあります。また、相続税の計算上も、過去の贈与分(2024年以降の贈与に関しては過去7年分)を相続財産に含めないといけません。
調査で必要になる書類
財産の調査を進めるとき、被相続人と契約をしていた各所へ問い合わせを行うことがあります。また、役所で手続を行う必要もあります。
そのとき本人確認を求められますので、ご自身の身分証明をするための書類等を準備しておきましょう。
さらに、被相続人の相続人であることの証明も必要であるため、「被相続人の戸籍謄本または除籍謄本」と「相続人自身の戸籍謄本」を取得しておきましょう。なお、戸籍謄本の取得には1通あたり450円、除籍謄本の取得には1通あたり750円の費用がかかります。
調査の方法と費用
相続財産の調査は、被相続人の自宅を調べることから始めます。自宅に大方の財産が残されていますし、そこに現物がなくてもその存在を証明する資料が残されていたりもします。
特に重要な、預貯金や不動産等の調べ方について以下にまとめます。
相続財産の調査例 | |
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預貯金 | ・まずは口座を特定する。被相続人の自宅を調べて「通帳」「キャッシュカード」「銀行から届いた書類」などを確認。電子メールなどから口座がわかることもある。 ・口座特定後は残高確認をする。そこで銀行に対して残高証明書の発行請求。 ・必要に応じて取引明細書も発行する。現在の残高だけでなく過去の取引を確認することで、その他の財産の存在が明らかになることもある。 ・ネット銀行など、通帳が存在しない銀行との取引がないかどうかも慎重に確認する必要がある。 |
残高証明書の発行に1,000円前後の費用が必要。取引明細書の発行には1通数百円ほどがかかる。 | |
不動産 | ・固定資産税の納税通知書を被相続人の自宅で探す。ここから不動産の地番や家屋番号がわかる。併せて権利証や登記識別情報通知書なども探しておくと良い。 ・固定資産税の納税通知書が見つからない場合は名寄帳を確認。市町村役場で取得できる。 ・不動産の所在がわかれば、登記簿謄本を取得。登記情報をチェックすることで所有者が確認できる。 ・その他、固定資産評価証明書、公図、地積測量図、都市計画図なども取得しておくと良い。 |
登記簿謄本の取得には1通につき600円が必要。収入印紙を貼付して納める。名寄帳に関しても300円程度で取得可能。 | |
有価証券 | ・預貯金と同様の流れで、まずは被相続人の自宅に残っている資料から、取引のあった証券会社を特定する必要がある。 ・上場株式を所有していた場合は、証券保管振替機構に開示請求をすれば口座開設先が調べられる。 ・取引先がわかれば残高証明書の発行請求。 |
開示請求には数千円の費用がかかる。 | |
借金 | ・被相続人の自宅に、借金やローンを疑わせる契約書がないか調べる。金銭消費貸借契約書があれば、金額や返済方法などが明らかになる。 ・口座の取引履歴からその確認が取れることもある。 ・信用情報機関、全銀協やJICC、CICに対して開示請求をすることで調べることもできる。 |
信用情報機関への開示請求には1,000円ほどの費用がかかる。 |
他にも、相続対象となるあらゆる財産の存在を調べていきましょう。自動車、骨董品や美術品、その他価値のありそうなものは特に注意してリスト化していきます。また、財産を調査していくときは、リストを「財産目録」としてまとめておくとその後の手続もスムーズになります。
調査に不安がある場合は専門家を頼るようにしましょう。その後財産の評価額を計算しないといけないなど、やるべきことはたくさんありますし、専門家に作業の依頼をしておくと安心です。
湘南なぎさ合同事務所(茅ヶ崎市、藤沢市、平塚市、鎌倉市)|相続開始後は財産調査が必要!調査対象や調べ方、費用を紹介