不動産を相続したときは相続登記を忘れないようにしてください。2024年には相続した不動産に関する登記申請が法律上の義務となっており、放置すると罰則の対象になってしまいます。
手続きの進め方ですが、自分で行うことも不可能ではないものの、専門家である司法書士に依頼して進めるのが一般的です。特にどのような場合に専門家が必要とされるのか、ここでは相続登記について解説していきます。
相続登記はなぜ義務となったのか
土地や建物を相続したときの登記申請※は、2024年4月1日から法律上の義務となりました。
※これを一般には「相続登記」という。亡くなった方が所有していた不動産の名義を、新たな所有者となった相続人の名義に変更する手続きのこと。
この法改正の背景にあるのは、全国で増加し続ける「所有者不明土地」の問題です。登記をしないまま数十年放置された土地が増え、公共事業や地域開発の妨げになるだけでなく、災害時の復旧や周辺住民の生活にも深刻な悪影響を及ぼしているのです。
この問題を解決するため登記が義務化され、義務を果たさずにいると「10万円以下の過料」を科すこともルール化されました。直ちに支払いを求められるわけではなく、正当な理由がないにもかかわらず3年以上放置している場合に処せられます。
なお、注意したいのは「改正法施行前に相続していた不動産も対象になる」という点です。それ以前の相続不動産に関しては2027年3月31日までに申請の対応を進めなくてはなりません。
単純なケースなら自分で対応できる可能性も
ご自身の財産・権利に関する案件であれば、本人が登記申請に対応しても法的に問題はありません。ただし、適切に手続きが進められるかどうかは別問題です。
専門性の高さや適切に申請できなかった場合のリスクの大きさを考えると司法書士に対応を任せることが推奨されますが、もし以下に該当するような単純なケースなら比較的ご自身でも対応しやすいといえるでしょう。
- 相続人が配偶者と子どもだけ、など親族関係がシンプル
- 被相続人が1ヶ所の住所で落ち着いていた
- 平日に役所や法務局に何度も足を運べる時間的余裕がある
- 戸籍謄本などの複雑な書類を読み取り、必要な情報を見極められる自信がある など
ただし作成した書類に不備があれば法務局から補正を求められますので、そうなるとさらに手間をかけなくてはなりません。登記申請書を間違いなく作成でき、複数の書類を漏れなく集められそうかどうか、慎重に判断しましょう。
司法書士の利用が推奨されるケース
もし次に掲げるようなケースに該当するなら、特に司法書士の利用をおすすめします。
| 司法書士に依頼すべき各ケース | |
|---|---|
| 相続人が複数いて、連絡を取るのが難しい人がいる | 遺産分割協議には相続人全員の同意が必要。音信不通の相続人がいたり遠方に住む兄弟姉妹が多かったりすると、円滑に手続きが進まない。 司法書士は戸籍から相続人を正確に特定し、連絡方法を工夫するなど、協議をまとめるサポートができる。 |
| 親が再婚していて、異母兄弟がいる | 被相続人に複数回の婚姻歴があるなど、前婚の子どももいるときはその人も相続人となる。 面識のない相続人との協議はトラブルも起こりやすいため、専門家の中立的な介入が円滑な解決のためには重要。 |
| 数次相続が発生している | 数次相続とは遺産分割が完了しないまま次の相続が発生した状態のこと。 たとえば、祖父が亡くなった後、父が相続登記をせずに亡くなった場合、原則として祖父から父への登記、父から子への登記と順番に行う必要があり、必要書類が膨大になる。 こうした複雑な案件では特に実務経験豊富な司法書士が必要。 |
| 不動産が複数の都道府県にまたがって存在する | 各地の法務局での申請が必要となり、自分で対応すると費用や時間の負担が大きくなってしまう。 この点、司法書士であれば効率的な処理が可能。 |
| 書類集めで困ったことがある | 戸籍謄本を取り寄せるときに「どのようなものが必要か」を上手く判断できない、市区町村に確認しても説明がわかりにくい、といった経験をしたことがあるなら、はじめから司法書士に任せた方が無難。 |
また、これらに該当しない場合であっても、ご自身ですべて適切に対応し切る自信がないなら司法書士へご依頼ください。
手続きに時間がかかりそうなときの救済措置もある
遺産分割協議が長引いたり、相続人が遠方で話し合いがなかなか進まなかったりするケースでは、「相続人申告登記」という仕組みを活用しましょう。
相続人申告登記とは、「自分が相続人である」ことを法務局に申し出るだけでいったん相続登記の義務を履行したと扱ってもらうことができる仕組みのことです。
特徴として、単独の相続人で申出ができる点、登録免許税(登記にかかる税金)がかからない点が挙げられます。
なお、同制度は義務違反の過料を免れるための暫定措置です。不動産を売却したり抵当権を設定したりするには本来の登記が欠かせませんし、遺産分割協議がまとまれば本来の相続登記をしなければなりません。

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湘南なぎさ合同事務所(茅ヶ崎市、藤沢市、平塚市、鎌倉市)|相続登記はいつ必要?自分でできるケースと専門家が必要なケースとは