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遺言執行とは~遺言執行者の役割や仕事内容について~

特定の人物に特定の財産を相続させたい場合、遺言書を使ってその旨を指定するという方法があります。ただし遺言書が作成されているからといって、相続開始後、自動的にその通りに遺産が分割されるわけではありません。

遺言内容を実現するため、「遺言執行」を行う必要があります。相続人、あるいは遺言執行者が存在する場合はその人物が遺言執行に対応します。

遺言執行の意味

「遺言執行」「遺言の執行」とは、「遺言者が亡くなった後、遺言として書き記された内容を実現するために必要な行為を行うこと」を意味します。

例えば自宅を誰かに与える旨の遺言が残されているのであれば、自宅に関する不動産の名義変更手続として、所有権移転登記などを行うことになります。不動産以外の財産も遺言書で指定をすることができ、その財産の性質に合わせて行う必要な手続全体を含めて「遺言執行」あるいは「遺言の執行」などと呼んでいます。

遺言の執行は他人に委ねることができる

基本的に遺言執行は相続人が行います。遺言者の権利義務を引き継ぐ相続人であるからこそできることが数多くあるためです。

ただ、遺言内容の実現は相続人に不利益をもたらすこともありますし、相続人間で不平等を生むこともあります。そうなると当事者である相続人自ら遺言執行をすると公正な仕事があまり期待できません。現実には公正な執行をしていたとしても、他の人物から疑いをかけられて揉めてしまうリスクもあります。

そこで「遺言執行者」と呼ばれる人物にその仕事を委ねることも民法で認められています。

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
引用:e-Gov法令検索 民法第1006条第1項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

この条文によると、遺言書を使って遺言執行者が指定できるとあります。遺言者が将来のことを想定してあらかじめ遺言執行を担う人物を指定しておくのです。

一方、家庭裁判所に選任してもらう方法もあります。

遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
引用:e-Gov法令検索 民法第1010条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

家庭裁判所に対して、遺言の内容に利害関係を持つものが「遺言執行者を選任してください」と請求すれば、遺言執行者が選任されることがあります。遺言執行者がいるときはこの請求をできませんが、遺言執行者がおらず困っている場面ではこの条文に基づく請求を行うと良いでしょう。

遺言執行者の役割

遺言執行者の役割は、「遺言内容を実現すること」です。

ポイントは、「相続人のために代わりに任務を遂行すること」が役割ではないという点です。

遺言執行者にとって重要なのは遺言書に記された通りに実現できるかどうかですので、その結果が相続人に不利益をもたらす場合でも遺言執行の貫徹を目指します。

相続人が「手続が大変で、自分のために代わりにやって欲しい」という場合に利用する人物ではないのです。その場合は別途法律の専門家を頼り、手続代行の依頼を出すと良いでしょう。

報酬の支払いが必要になる

遺言執行者は、後述するようにさまざまな仕事を遂行していくこととなり、手間暇かけて、費用もかけて遺言内容の実現を目指します。無報酬でこの作業にあたるのは負担が大きいですし、法律上も報酬を定めることができると規定されています。

遺言者が遺言書上に報酬について記載していたのであればその通りに従い、その記載がないときは家庭裁判所がさまざまな事情を考慮して決めることができます。

また、遺言執行にかかる費用を遺言執行者の自己負担にすべきではありません。そこで発生した費用については相続財産から負担すべきことも法定されています。

遺言執行者の仕事内容

遺言執行者は、遺言の執行に関わる広範な権利と義務を持ちます。そのため仕事内容の範囲は広いです。また、具体的な内容は遺言内容によっても大きく異なるため、同じ遺言執行者という立場でも事案によっては起こすべきアクションが変わってきます。

相続財産の管理

相続財産の管理をするために必要なすべての行為に関して、遺言執行者は権限を持ちます。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
引用:e-Gov法令検索 民法第1012条第1項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

財産の管理を相続人に任せていると、相続人が自己のために使ってしまうおそれがありますし、不注意により財産としての価値を毀損してしまうなどの問題も起こり得ます。そこで遺言執行を専任する遺言執行者に財産管理から任せる必要があります。

このとき遺言執行者は、自分の財産を管理するときと同等の注意力を持って対応する必要があります。

遺贈の履行

遺言書の記載に基づいて相続財産を与える行為を「遺贈」と呼びます。この遺贈のために必要な行為、例えば物の引渡しなどの行為は、遺言執行者だけができます。

遺言執行者がいるとき、相続人に加えて遺言執行者も遺贈の履行ができる、のではなく「遺言執行者しか遺贈の履行ができない」という点に注意が必要です。遺言執行者により中立公正に仕事を行うため、その仕事に反する相続人らの処分権は法律で制限されています。

必要に応じて、銀行等に預貯金払戻しの請求や解約の申入れをすることもあるでしょう。この権限も遺言執行者にはあります。従来、預貯金の払い戻しや解約の申し入れをする権限は法定されていなかったのですが、近年の法改正によりこの権限が明確化されました。

相続人への通知

遺言執行者として指定あるいは選任された方は、仕事を始めたタイミングですぐに遺言内容を相続人に知らせなければなりません。これは法律上規定されている義務です。

本来は相続人が被相続人の権利義務を引き継ぐはずであるところ、遺言執行者が指定されていることによって相続人の行動は制限されてしまいます。遺言の内容について利害関係を持つにもかかわらず遺言執行者の有無すら知ることができないとなれば行き違いが起こってトラブルに発展するおそれもあります。

そこでこの条文にあるように、遺言執行者は相続人に対して通知することが義務となっています。遺言執行者となり仕事を始めるときは、遺言書の写しを添えて通知するなどの対応を取ることとなります。

財産目録の作成

遺言執行者は相続財産の内容を調査し、財産の種別や数量、価額を調べた上で「財産目録」としてそれらの情報をまとめ、さらに相続人に交付しないといけません。

対応が難しい場面もあるかと思います。専門家を利用するなどして財産調査や価額の評価を進めていくことも可能ですので、すべてを1人で対応しようとせず、プロも頼りながら遺言執行に対応していくと良いでしょう。

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