遺贈と生前贈与の違いと共通点について!課税と節税の方法も比較/湘南なぎさ合同事務所

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遺贈と生前贈与の違いと共通点について!課税と節税の方法も比較

相続に関する手続き、遺産分割や相続税対策に関連して「遺贈」「生前贈与」という用語を聞いたことがあると思います。どちらも財産を与えるという、なんとなくの漠然としたイメージは持っているかもしれませんが、具体的にどのような違いがあるのかご存知ない方も多いでしょう。
効力を生じさせるための要件や課税のされ方など、それぞれには違いがあります。
この記事で遺贈と生前贈与の違いを整理していきますので、「ご自身の財産を特定の者に譲りたい方」「法定相続人の方」などはぜひ参考にしていただければと思います。

遺贈とは「遺言書による財産の譲渡」のこと

まずは「遺贈」について説明しておきましょう。
遺贈とは、「遺言書によって遺言者の財産を譲渡すること」を意味します。

遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた時に譲渡の効果が発生する、というところがポイントです。

遺言書は本来作成する義務はなく、これがなくても相続人間の話し合いで分配は起こります。しかし、「特定の財産を誰かに指定して渡したいとき」「特定の者にある財産が渡らなくしたいとき」「財産の分配方法につき自分の意思を事細かに指定したいとき」などには遺言を残すことがおすすめです。

ただし遺贈の場合、遺言が有効でなくてはなりません。遺言書は法に則った適式な方法で作成されなければならず、作成方法に不備があると無効になってしまいます。とはいえ事実上の効果まで妨げられるわけではないため、遺言の内容に従って相続人間の任意で分配していくことは可能です。問題となるのは(不備があった)遺言の内容に納得がいかない者がいる場合です。遺言の内容に沿って強制的に分配させることができないため、遺言はなかったものと同義になってしまいます。

なお、遺贈によって財産を与えられる者は「受遺者(じゅいしゃ)」と呼ばれます。

遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類がある

遺贈について、民法第964条に規定が置かれています。

(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
引用:e-Gov法令検索 民法第964条
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

同条から分かるように、遺贈には2つの種類があります。
1つは財産の割合を指定する「包括遺贈」、もう1つは財産の種類を指定する「特定遺贈」です。
財産の内容に着目して譲渡を指定したのであれば、特定遺贈となるように遺言書に記述します。
他方、単に特定の者に多くの財産がいくようにしたいときには包括遺贈となるよう、どれだけの経済的価値を与えたいのかを割合で遺言書に記載します。

生前贈与とは「贈与契約による財産の譲渡」のこと

続いて「生前贈与」について説明していきます。

「生前」という言葉が入っていますが、要は贈与契約に基づく財産譲渡のことです。
ここで言う「贈与」とは民法第549条等に規定されている契約類型を指します。

(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
引用:e-Gov法令検索 民法第549条
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

相続を意識してその対策として行う場合に、特に相続が開始されていないことを強調して「生前贈与」と呼称されます。

ポイントは、両当事者の意思表示に基づいて結ばれる契約、という点にあります。原則契約は意思表示のみで成立するため、遺贈のように書面を作成しないといけないわけではありません。双方の合意が口約束であっても存在していれば成立します。
ただ、実務上はトラブルを避けるため契約書を作成するのが一般的です。

死因贈与について

贈与の一種に「死因贈与」もあります。
贈与の効力発生を生前ではなく、死後生じさせる贈与契約のことです。
この場合遺贈に似た効力が生じます。しかしながら、あくまで双方の意思表示に基づく契約が基礎にありますので、一方的な贈与はできません。

遺贈と生前贈与の違い

遺贈と生前贈与の違いを下表にまとめました。

遺贈 生前贈与
譲受人との合意 不要 必要
撤回の方法 撤回も放棄も自由
※包括遺贈の場合は家庭裁判所
への手続きが必要
契約解除の方式に従い一定の制約がかかる
課税内容 相続税 贈与税
※相続前3年以内の分は相続税課税
節税の方法 配偶者控除や財産の内容に応じた特例を有効活用しつつ相続人間の分配方法を工夫する 前もって基礎控除内で贈与を繰り返す

主に、双方の意思により締結されたことに基づく違いと税制上の違いに分けられます。 それぞれ詳しく見ていきましょう。

譲受人との合意があるかどうか

遺贈の場合、もらう側の意思は関係ありません。遺言書を作成するのに受遺者の許可は不要ということです。
他方で生前贈与は贈与契約を締結しなければならず、互いの合意がなければなりません。

撤回および放棄の方法

前項の内容に関連しますが、遺贈の場合には一方的な意思表示に基づくため、撤回や放棄が容易です。
例えば遺言書の作成後も遺言者はその内容を自由に撤回できますし、いつでも別の内容に作り変えることができます。また受遺者側も遺贈を放棄するなどして受け取らないことができます。

(遺贈の放棄)
第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
引用:e-Gov法令検索 民法第986条第1項
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

但し、包括遺贈であった場合は、「相続人と同一の権利義務を有する」ことになっていますので、放棄をするためには相続放棄と同様、包括遺贈が自分にあったことを知ってから3ケ月以内に、家庭裁判所に包括遺贈の放棄の申立てが必要です。

一方の生前贈与ではその他一般の契約同様一方的な解約ができません(同意があれば解約可能)。ただ、贈与は実質譲受人に一方的な利益が生じることが多いですし、書面を作成せずにした贈与契約に関しては例外的に各当事者が解除できる旨規定されています。

(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索 民法第550条
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

譲渡のタイミング

遺贈の場合、遺言書の効力が生じる自らの死後でなければ譲渡が行われません。そのため好きなタイミングでの譲渡はできません。
一方生前贈与の場合本人がまだ存命であるため、自らの意思で好きなタイミングでの譲渡が可能です。渡し方や渡す内容なども同様に、柔軟な措置が取れます。

課税の内容(相続税か贈与税か)

得た所得の大きさに応じて税金がかかるように、遺贈や生前贈与によって財産を得た場合にも税金がかかります。

「遺贈で得た財産・死因贈与で得た財産に対しては相続税」「生前贈与で得た財産に対しては贈与税」が課税されます。

ただし、相続が開始される前3年以内の贈与に関しては、税制上相続税の計算に含められます。
※贈与税として納めていた分は相続税の計算上控除される
参照:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm)

節税の方法

前項のように、課税の内容が相続税または贈与税と異なるため、節税の方法にも違いが生じます。
例えば相続税の場合には配偶者控除という非常に大きな控除制度がありますし、法定相続人の数に合わせた数千万円レベルの基礎控除などその他様々な控除制度があります。これらを工夫し、被相続人との間柄などを考慮して財産を分配していくことになります。
贈与税の場合には1年間の非課税枠を使いつつ、教育や結婚の資金のためといった贈与の目的などに応じた控除制度を利用して節税を図ることになるでしょう。

遺贈と生前贈与の共通点

遺贈と生前贈与につき、相違点に着目して紹介してきましたが、共通する点も多いです。

相続人等のトラブル防止に役立つ

相続開始後のトラブルを防ぐために遺贈も生前贈与も役に立ちます。
遺産分割協議などでトラブルが生じると予想される場合にはこれを防ぐためにあらかじめ財産の分配方法を指定しておくことが有効だからです。
望ましいのは全部を指定しておくことですが、それが難しい場合は、せめて不動産の相続など、揉めやすい財産についてだけでも指定しておくと将来の手続きがスムーズになって良いでしょう。

法定相続人以外の者にも財産を譲渡できる

遺贈も生前贈与も、法定相続人以外の者に財産を渡すことができます。

何ら指定なく相続が始まると、通常は法定相続人間で分配することになります。
しかし生前介護を献身的にしてくれていた人や、その他大変お世話になった人に財産を渡したいのなら、遺言書を作成するか贈与の契約を締結しておかなければなりません。

ただ、財産のすべてを法定相続人以外に譲渡したとしても、譲受人・受遺者は、「遺留分侵害額に相当する金銭の支払い」の請求を一定の相続人から受けることは妨げられません。配偶者や子などに最低限の生活費等を確保する趣旨で、遺留分の制度が設けられているのです。
そして遺留分の算定をする際の相続財産には「相続人に対する生前贈与は過去10年分」「相続人以外に対する生前贈与は過去1年分」が含まれますので、生前贈与をしたからといっても直前の贈与分は回収されることがあります(遺留分権者に損害を与えることを知って行ったのであれば時期に関係なく遺留分算定の際の相続財産に含まれる)。

手続等に手間がかかる

いずれも、その効力を正しく生じさせるために手続上の負担がかかります。
生前贈与であれば契約を締結しその旨書面で残すことが望ましいため、契約書作成などに手間がかかります。遺贈であれば作成方法に不備なく、適切な形で作成しなければならず、その方法を調べたりチェックしたりするのに手間がかかるでしょう。
さらに、節税効果を狙うのであれば税制上の特例なども調査しなければなりません。

ただしこれらに関しては行政書士や司法書士、弁護士、税理士などの専門家に相談し、事務の委任をすれば解決します。コストはかかりますが、スムーズに手続きを進められ、何より、狙った通りの効果を的確に生じさせられる点でメリットが大きいです。

遺贈と生前贈与で迷ったら専門家に相談

「遺贈にしようか、それとも生前贈与をしようか」とお悩みの方は、まずは専門家に相談することをおすすめします。相続人の納税の負担を軽減し、相続トラブルによる親族間の人間関係悪化も防ぐことが期待されます。

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