不動産を相続しても、それを有効活用できなければ管理や税金の面で負担だけが発生してしまいます。そのため取得する不動産が空き家になってしまうときは相続することに対して慎重に判断しなければなりません。
また、相続人がほかにいるときはその他財産と同じく遺産分割協議を必要としますし、所有者となったときは相続登記の手続きも欠かせません。
当記事では空き家を取得する方が知っておきたいリスクや手続きを解説していますので、ぜひ参考にしてください。
相続前に知っておきたい空き家取得のリスク
空き家を取得することには、多くのリスクが伴います。
まず、もっとも大きな問題として「建物の管理責任」が挙げられます。
取得した空き家は適切に管理しないと急速に老朽化が進行してしまい、資産価値が大きく低下する可能性が高いです。さらに、管理不足による倒壊・火災等の事故が起こってしまい、所有者としての法的責任を問われるリスクもあります。
「経済的な負担」も無視できません。
空き家であっても固定資産税などの税金は継続して課せられます。加えて建物の維持管理費も発生し、これらの支出が相続人を経済面でも圧迫することになるでしょう。
「空き家が地域の治安や環境に悪影響を及ぼす可能性」も考える必要があります。
適切に管理されていないと、空き家が犯罪の温床となってしまったり、害虫や野生動物の住処となってしまったりする危険性もあるのです。こうした原因により近隣住民とのトラブルに発展するおそれもあります。
空き家を取得するときの手続き
もし空き家を取得するのなら、以下の流れに沿って手続きを進めていくことになるでしょう。
1. その他の財産と相続人の確認
2. 遺産分割協議
3. 相続登記
4. 相続税の申告・納付
各手続きについて詳細を見ていきます。
その他の財産と相続人の確認
まずは被相続人の戸籍謄本や除籍謄本等を取得し、法定相続人を特定することから始めましょう。これは空き家の有無にかかわらず、相続をするときは常に必要となる作業です。
相続人の調査に並行して、空き家以外の相続財産(預貯金、有価証券、その他の不動産など)についても調査を進めましょう。
遺言書の有無も要チェックです。これが作成されているときは家庭裁判所でその内容を確認(公証役場や法務局で保管されている場合を除く。)し、検認を受けます。そして遺言内容として空き家を取得する人物がもし定められているのなら、原則としてその内容に従わなければなりません。
遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員で空き家を含む相続財産の分割方法を決定する重要な手続きです。必ず相続人全員の合意を必要としますので、取得する財産の価額のバランスなども考慮しないと相続人間で揉めることになるかもしれません。
※遺言書が作成されているときは、そこで言及されていない範囲で協議を行う。
この協議では、誰が空き家を相続するか、売却するのか、あるいは共有するのか、などを話し合いましょう。遺言書で指定されていないときは自由に定めることができますが、複数人で共有すると後々トラブルになる危険性が高くなるため、基本的には誰か1人を所有者として定めるようにしましょう。
協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成して当該文書に全員が署名・押印します。
相続登記
遺産分割協議が終われば各財産の所有者は定まります。ただ、不動産に関しては別途「相続登記」の手続きが必要であるため留意しておいてください。
相続登記とは、相続を契機とする所有権の移転を登記することを意味します。要は名義変更の手続きを意味しており、2024年4月1日からはこの登記申請が法的な義務となっていますので、忘れずに対応しないといけません。
登記申請書の作成、戸籍謄本や遺産分割協議書などの準備をしておく必要があります。不備があると第三者に所有権を奪われるリスクが高くなるため、司法書士にサポートをお願いして対処するのが一般的です。
相続税の申告・納付
空き家やその他の財産の価値を評価し、相続人等それぞれが取得した財産の合計額が基礎控除額(3,000 万円+(相続人の数×600 万円))を超えるときは、相続税の申告が必要となります。
被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内が期限として定められていますので、それまでに各種調査や遺産分割協議なども済ませて、税の計算・申告・納付に対処しないといけません。
申告の必要性を判断するため、各財産の評価額を計算するため、税額を計算するために税理士を活用するのが一般的です。
空き家を手放したいときの手続き
「空き家を取得したくない。」「空き家の所有が負担になっている。」などの事情で悩んでいるときは、以下の手続きも検討しましょう。
相続放棄の申述
「相続放棄」をすることで、被相続人の権利と義務を一切相続することがなくなります。空き家の相続を望まない場合はこの選択肢も検討すると良いでしょう。
相続放棄申述書を作成してその他必要書類とともに家庭裁判所に提出し、後日送られてくる照会書に適切に回答。審査を受け、問題がなければ相続放棄が認められます。
ただし、相続放棄をするには「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」に手続きを行わないといけません。また、「空き家のみを相続放棄することはできず、その他一切の財産も取得できなくなる」という点にも注意してください。
第三者への売却
買い手さえ見つけることができれば、空き家を売却し、手放すこともできます。これにより売却益が得られるかもしれませんし、今後管理の負担を負う必要もなくなります。
ただ、立地によってはなかなか買手が見つからず売却までに時間を要してしまいます。想定していた価格より大幅に安く売ることになってしまい、ほとんど利益が出ないことも起こり得ます。
また、大きな売却益が得られたときでも譲渡所得にかかる所得税には注意が必要です。納税が必要になるかもしれないため、現金等の納税資金を使い込まないようにしましょう。
※相続・遺贈により取得した家屋等を売却した場合、一定要件を満たせば譲渡所得の金額から最大3,000万円までの特別控除が適用可能。
相続土地国庫帰属制度の利用
公的な制度として「相続土地国庫帰属制度」というものがあります。
これは相続や遺贈(但し、相続人に対する遺贈に限る)で取得した土地の所有権を国に帰属させることができる制度で、空き家をそのまま受け取ってもらうことはできませんが、空き家を解体したうえで一定の要件を満たすことができれば使わない土地を国にあげることが可能となります。
買い手が見つからない場合でも土地を手放すことができますが、審査に通らなければなりませんし、建物の解体費用が発生する点にも注意が必要です。
湘南なぎさ合同事務所(茅ヶ崎市、藤沢市、平塚市、鎌倉市)|空き家を取得する相続人が知っておきたいリスクや手続きについて