被相続人の自宅、その他家屋を相続することで、相続人が当該不動産の所有者として自由に利用できるようになります。しかし、そこに居住するなどの利用予定がない場合は相続以降放置され、ただただ維持費などの負担が発生してしまうことも珍しくありません。
そこで、家族など相続人となる方にこの空き家問題を負わせたくない、と考えるのであれば前もって対策を講じておくことが大事です。
空き家を抱えることの問題
子どもと同居していない方、あるいは不動産を複数所有している方は、空き家問題にご注意ください。
所有不動産の中に別荘として購入したもののあまり活用できていない物件や、相続したものの遠方に位置するため利用予定が未だないという物件を持っている場合にも注意が必要です。相続人が把握できないまま相続が開始されることも起こり得ます。
そして空き家が発生してしまうことで「維持管理に負担がかかる」「活用・処分に苦労する」「遺産分割が進まない」といった問題が起こります。
維持管理に負担がかかる
居住、その他賃貸に出すなどの利用をしていない空き家にも金銭的負担は発生します。
例えば「固定資産税」の支払いは免れることができません。ほかにも防犯対策であったり、劣化による近隣への危険が及ぶのを防ぐための修繕であったり、さまざまな面で費用が発生してきます。
空き家が遠方にある場合だと、確認・管理のための移動にも費用や時間がかかってしまいます。
活用・処分に苦労する
無駄に維持費がかかり続けるのを回避するには、その家屋を有効活用するか、手放す必要があります。
資産価値の高い物件であれば借り手や買い手も見つけやすいですが、実際のところ空き家となってしまうような物件は資産価値の低いものが多く、なかなか賃貸に出すにも売却をするにも苦労をすることが多いのです。
賃貸をするためにリフォーム費用が発生してしまったり、希望する家賃だと入居者が集まらなかったりすることもあります。
遺産分割が進まない
空き家となるような物件が遺産に含まれていると、相続手続きの段階から問題が起こりやすいです。
相続人の誰にも利用予定がないと引き取り手がなかなかつかず、遺産分割が進まないこともあります。そうなると相続税の申告期限までに間に合わない危険性も出てくるのです。
空き家問題が起こらないようにする方法
空き家問題が起こらないようにするには生前からの対策がとても重要です。
もともとの所有者であり将来被相続人となる方が、あらかじめ空き家となりそうな物件の予測を立て、以下に掲げる「売却」「国庫への帰属」などの対策を進めておきましょう。
生前の売却
生前に空き家となるリスクのある物件を把握し、該当するものがあるのなら生前に売却しておくなどして極力相続人に負担がかからないようにしておきましょう。
生前から取り組むことで落ち着いて売却手続きに臨むことができますし、期間に余裕があると納得のいく条件での売却も成功させやすいです。また、売却益を得ることで相続人の納税資金を蓄えることもできます。
売却の方法については不動産会社に相談すると良いです。
相続土地国庫帰属制度により手放す
「相続土地国庫帰属制度」というものがあり、一定の条件を満たせば、土地管理費相当額の
負担金の納付が必要とはなりますが、土地を国庫に帰属させ手放すことができます
ただし建物をそのまま帰属させることはできず、同制度の対象となるのは土地だけです。そのため利用できなさそうな家屋とその土地があるときは、更地にしておくなどの準備も必要となるでしょう。
なお、同制度の実情としては、2024年9月までのデータによると申請件数の総数は2,697件。帰属件数は868件であることがわかっています。宅地にならんで田・畑を対象とした申請も割合多いです。
また、申請をしたものの同制度による帰属が受け入れられず却下・不承認となることもあります。その主な要因としては「必要な添付書類の提出ができていない」「土地の管理・処分を阻害する工作物などが土地上にある」などが挙げられます。
参照:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html
相続人は不動産の調査漏れに注意
相続開始後は、相続人は相続の対象となる不動産を調べてください。空き家となりそうな物件がないかどうか、一つひとつ調査していきます。 所有不動産がはっきりしないケースもあるでしょう。そんなときは亡くなった方が住所を置いていた市町村など、所有が推測される自治体にて名寄帳を請求してください。この手続きによって当該エリアにおける所有の有無や場所が確認できます。
湘南なぎさ合同事務所(茅ヶ崎市、藤沢市、平塚市、鎌倉市)|家族間での空き家相続問題の回避・解決する方法